十八こ目

胃潰瘍がぶり返したので病院に行った。
初老の医師は「あんまりがまんしてると胃穿孔になるで」と言う。
さすがに胃に穴が空いたら痛いから救急車呼びますよと言うと、 「いや、脳内麻薬が出るから痛くないんや」とのたまう。
確かに、胃痛でのたうちまわってるうちにスイッチが切れるように眠り込む事が多々あった。痛みは瞬時に消えている。
「胃に穴が空いて、血と胃酸で腹腔がぱんぱんになっても脳内麻薬で痛みは感じない。肝臓だの肺だのが溶けてようやく痛みを感じると、それまで感じてなかった痛みも全部いっぺんにくる」
だからおおかたショック死するな、と爺はぬかした。
胃潰瘍のくせに酒をやめない僕を脅したんだと思うんだけど、本当だったら相当に嫌な死に方だ。