三十二こ目

ツーリングライダー、特に野宿を繰り返しながら長期間走るライダーの間に伝わる絶対に効く交通安全のお守りを御存じだろうか。
それはエロ本、できるだけ自分の趣味ではないえげつないものをザックなりウエストバックなりに入れておくと言うものである。 バイクに乗っていると多少の事故は仕方がないと思いがちだし、ライダーはその覚悟をしてはいるが、長期に渡るツーリングでは事故は致命的である。
そのために安全マージンは多めにとっておくべきだが、ロングツアラーは往々にして最後の1キロ2キロを先に進んでしまいがちだ。
そこで、ブレーキとして、もし事故をすればザックの、あるいはウエストバックの中のあのえげつないエロ本を救急隊の人や看護婦さんに見られてしまうかもしれない、という状況を自ら作る。
河原に落ちているエロ本の多くは、不幸にしてそれでも事故にあってしまったライダーが最後の力を振り絞って投げ捨てたものなのだ。