八十一こ目

 近所の、割といいとこに勤めてる旦那の奥さんなんだが、座敷犬の散歩のついでに電柱を通信機にしてどこか我々の想像もつかぬところと交信しているようだ。
 座敷犬は奥さんが交信している間じっとして待っている。そう躾られているという感じではなく、彼は下位のものを守ろうとしているようだ。
 ある日、なんとなく犬に対して「お疲れさんですな」と声をかけた。
 犬は「まあ仕事でっさかいに。しょうがおへんわ」といって笑った。
 以来フィールドワークを重ね、犬の12%は人間と会話できると断言できる資料が揃ったのだが、発表するあてはない。
 「会話できて当然の人間同士でも殺し合いするんでっから、犬っころなんぞ何ぼでも殺されまっしゃろ」とのことなので、俺のようなキチガイとしか会話しないようにしているとの事である。
 「人間が一番危ない動物なんは確かですわ」と西成で野良犬をしている実験体23号(仮名)さん。「私らは殺さないかん奴と生かしといてもいい奴の区別はすぐにつくんですが人間には
それがでけへん 」と彼は言う。
「人間はやたら殺したがる。殺せば済むような単純な事例はほとんどあらへんのにね」