十二こ目

底辺のプロレタリアートでありながら生意気にも家を買ってしまった。
しかも中古じゃなくて新築を買ってしまったのだが、これにはいろいろとわけがあるので生っ粋の労働者のくせに生意気だと石を投げるのはちょっと待って下さい。
ひとつは新築のほうがローンの審査が通りやすいから。 もうひとつは、いらん因縁がついていないからだ。
不動産屋が義兄の知人だったせいもあるだろうけど、中古物件をまわっていると、「夜はこの窓から外を見ないように」とか、「時々壁が鳴りますけど害はないので気にしなさんな」とか使用上の注意をつけられる。
そんなこんなで無い袖を自分でもあると信じ込み、分不相応にも新築物件を購入するに至ったのだが、引っ越す前にまずやったことは近くの神社にお札を貰いに行く事だった。
これは不動産屋の強い薦めがあったからで、彼は「せっかく新しい家なんだから、余計なものが入る前に護ってもらっときなさい」とおぬかしになった。
「家には因縁は無いけども、土地には因縁がてんこもりやしなあ」
「そんな土地買わせたんかいな」
「京都に因縁の無い土地があると思てんのかいな」