四十七こ目

テレクラのサクラさんから聞いたもう一つの話。
彼女は夜寝るときにはテレビをオフタイマーにして寝ると言う。
真っ暗で静かだと生きてるのか死んでるのかわからなくなるので寝付けないそうだ。
で、ある日。
ふと目覚めると、テレビが砂の嵐になっていた。最近は放送終了後も定点カメラの映像なんかを放映していたはずなのに。
他のチャンネルに変えようとしてそれに気が付いた。
よく見るとちらちらとノイズが走るばかりの画面の中央に、なにやら蠢くものがある。やがてそれは荒い解像度ながらこちらに這いずってくる女の姿とはっきりとわかるようになった。
ここまで聞いて、「それは『リング』を放送してたんじゃないの? 」と僕が聞くとテレクラのサクラさんは即座に否定した。
女が徐々に近付いてきて、画面いっぱいになり、こちらに向けて手を延ばそうとしたその刹那、オフタイマーが作動した。
「画面が消えて、がつんって音して、テレビが揺れてんで 」
僕はここは笑うところだと思ったが、テレクラのサクラさんの表情を見るとそういうわけにもいかないようで、大変に困ってしまった。