五十四こ目

「人轢いたんならなんぼ酒飲んでてもわかるよ」
「ふんふん」
「あの婆さんは空から降ってきたんや」
「ふんふん」
「それに、あの婆さんはいまでも俺を追いかけてきとるんや」
「ふんふん」
Sがぎょっと天上を見上げた。
釣られて僕も見たが、別段なんのかわりもない。
「きた、婆さんが来たあ」
Sが部屋を出ていった途端、アパートが揺れた。