百物語

二十三こ目

さっきまで五月蝿かった近所の座敷犬が吠えなくなった。 そういえば飼い主は年寄りの一人暮らしだったような。

二十二こ目

化野念仏寺の手前から亀岡に抜ける道の途中で、田圃の中に巨石があり、そこに浮かぶ顏を見たものは必ず事故に遭うと言う。 だけど肝心の巨石がどうしても見つからない。

二十一こ目

僕は深泥池とそこに生きてる草や木や鳥や蜻蛉が好きなので隙があったらカメラを抱えてほとりをうろついている。 ここは怪談の舞台として全国的に有名なようだが、ここで怪異を体験したことはない。 よく晴れた日曜日には隣接する公園で子供たちが走り回り、…

二十こ目

学校に行かなかったから死んだ子供はいないが学校に行っていたから死んだ子供は多い。

十九こ目

今の日本において最も反政府的な行動は選挙の投票率を上げる事である。

十八こ目

胃潰瘍がぶり返したので病院に行った。 初老の医師は「あんまりがまんしてると胃穿孔になるで」と言う。 さすがに胃に穴が空いたら痛いから救急車呼びますよと言うと、 「いや、脳内麻薬が出るから痛くないんや」とのたまう。 確かに、胃痛でのたうちまわっ…

十七こ目

京都から9号線をひた走ると某ニュータウンがある。 ふと団地の窓を見ると、その中のいくつかから巨大な目が見つめている事がよくある。 目が三分の二を越えるとヤバいらしい。 何がヤバいのかは知らないけど。

十六こ目

山の中とかならともかく、二千年続いてる都市の中心部で、一度も人が住んだ事のないところと言うのはそれだけで一種異様な雰囲気がある。糺の森はそんなところです。

十五こ目

あまり知られていないことですが、婦人誌の多くは頁のフチがナイフの如く薄くノコギリ状になっていて、製本から書店の店頭に至るまでに多くの流血を招いています。 婦人誌の発売日に入荷する段ボール箱に血染めの手形がついていても本屋が平然としているのは…

十四こ目

さっきからお隣の家で赤ん坊が泣いてると思ったら、おっさんが唸ってる声だった。警察に電話したほうがいいだろうか。

十三こ目

昨日、知人の家で呑んだ帰り道。呑み足りなかったのでビールを買いにコンビニに寄った。 駐車場には数台の、いわゆる走り屋の車が停まっていた。 そのうち一台のバンパーがなくなっていて、数人の若者がしゃがみ込んでいた。 この近くにはいわゆる峠というと…

十二こ目

底辺のプロレタリアートでありながら生意気にも家を買ってしまった。 しかも中古じゃなくて新築を買ってしまったのだが、これにはいろいろとわけがあるので生っ粋の労働者のくせに生意気だと石を投げるのはちょっと待って下さい。 ひとつは新築のほうがロー…

十一こ目

京都市内にはたいてい町ごとにお地蔵様がいらっしゃって、毎年夏には地蔵盆という行事が行われる。 古くからの習わしが残ってる町もあるが、たいていの町内ではたいしたことをするわけでなく、お地蔵様の前にテントを張って、そこで子供達が遊ぶのが殆どだ。…

十こ目

人の子を監禁し餓死させても無罪と主張する人がいる。 それを止めずに見ていた母も無罪と主張する。

九つ目

袋菓子を開けたら必ず食べきる友人がいる。 学生の頃に、前の晩に食べ残したポテトチップスの袋に手を突っ込んだら、ゴキブリを掴んでしまって以来恐くて残せなくなってしまったそうだ。 残りを捨ててしまわないところが偉いが、間食をやめないところは少し…

八つ目

キャンプをするときは川や海の近くで、常に音のしている場所を選ぶ。 そうすれば夜中テントの周りを歩く足音が聞こえてもせせらぎや波の音だと思えるから。

七つ目

殺意を持たずに子供を二人も殺しても懲役17年。

六つ目

スーパーなどで売り場の布団やパンに針が刺されると言う事件が頻発していた時に、友人とどんな商品に針が刺されていると困るか話し合ってみた 結論として、リアルドールのホールが一番深刻な被害が出るだろうという結論になった。

五つ目

月末と月初めは新刊がたくさん出るので新刊台の入れ替えを行う。 で、ごそっと本をどけると、必ずと言っていいほど髪の毛が落ちている。 ちゃんとダスキンのハンディモップで奇麗にしてから新刊を並べているのに、次の新刊が出る頃には埃とともに数本の髪の…

四つ目

昨夜、うちの猫の奇矯な行動を三つ目として書こうとしたら文字化けしてついに登録できなかった。 よって三つ目は欠番とする。

二つ目

居酒屋で小耳に挟んだ話。 丸太町通りにある公衆便所では、毎晩同じ時間に個室から呻き声が聞こえてくると言うので確かめに行ったが、そんな声は聞こえなかったと、学生ふうの男が自慢げに話していた。 あの公衆便所には個室がなかったはずなんだが。

一つ目

又聞きとかじゃなくて、本当に知人が経験した怪異と言うものを直接聞いたことがあるのは一つしかない。 深夜、トイレに行ったら便器の中の人と目が会ったそうだ。